物として好きな本たち -現行品編-
前回の洋古書に続き、国内外の現行品書籍でプロダクトとしてときめく本のご紹介。
上写真とあと3冊あります。
今回こんな本の記事をアップしたいと思った原因、この松長絵菜さんの「スプーンとフォーク」を
Pinterestに載せたいのに見せたい部分の写真がネット上に無い…ということからでした。
装丁はku:nelなどの有山達也さん。
小口(ページの断面)が年月が経ったかのように日焼けした色になってます。
表2(表紙の裏)と表3(裏表紙の裏)の柄が色違いなのは、滋味目のデザインなので少し華やぎを出すためでしょうか。
ビニールのカバーがかかってるのですが、昔懐かしい横しまのもの。
余分なく本に対してぴっちりサイズなのも、本の存在感を個性的に見せている気がします。
小口が日焼けしているということは… ページの四辺もうっすらオレンジ色です。
よく見ないとわからないけど有ると無いとでは印象が変わる小さな仕掛け。
次に右上の”Telomere” 「テロメア」は染色体の構造名だそう。
書店で売っていた時のまま、帯とビニールカバーを外せないでいます。
外すとタイトルのみになってそれもまたかっこいいはず。もう5年くらい寝かせてから。
本文は文字無しの潔さで、ページいっぱいに押し花の写真が迫力を持って掲載されています。
透明の板に押し花を載せて透過光ごしに撮影しているとか。
大きな草花も平に成されていて、珍しいものもあります。
何より平になることと透過光の効果で植物のディテールがよく見えて大変面白い。
写真は永石勝さん、装丁は平野敬子さん。
永石さんが長期旅行の途中に見つけた花をスクラップブックに挟んでいたものたちだというので
その豪快な挟みっぷりに押し花の新しい視点を感じます。
右下は小川洋子さんの「密やかな結晶」。詩的な小説です。
ネット上でこの表紙画を見てすぐamazon。
装丁・挿画はアーティストで装丁家の望月通陽さん。大御所です。
絵もデザインも一人で手がけられると、やはり本全体のまとまり具合が確固たるものになりますね。
金箔押しのタイトル文字も手書きのものなので雰囲気がすごく合っている。
まぁ何よりトリに惹かれたのですが!
カバーがとても素敵なのでビニールカバーで保護しておこうかな…
そしてあと3冊はこちら。
左の”Paris versus NewYork”は、パリ在住のアートディレクターさんがブログにアップしていたイラストをまとめた本。
カバー外しても型押しでエッフェル塔とエンパイアステートビルのシルエットが。
全体を通して使われているコテコテな書体がいいです。
中は、見開きでパリとNYの比較をイラストとタイトル・やや毒も入ったキャプションで構成。
左:パリは”entrée pour les arts” 「芸術の入口」としてルーブルのガラスピラミッド。
右:NYは”entrance for the geeks” 「オタクの入口」としてアップルストアが。
ガラスの幾何形体建造物つながりで比較してます。
そして右上の青い長細い本は、イラストレーターnakabanさんのリトルプレス「リスボアの小さなスケッチ帖」
ポルトガルの首都Lisboaで鉛筆1本で描かれたスケッチ全てが掲載された画集です。
コバルトブルー1色でやや厚めのわら半紙のようなグレーがかった紙に刷られ、
天ノリで綴じられた簡素な造りが、異国の素朴でミステリアスな雰囲気を演出しています。
nakabanさんが後書で「ページをめくるとリスボンの街を散歩しているような本を作りたかった」と書かれていること、実現できてると思います。
最後、文庫本の「おやつにするよ」 イラストレーターの平澤まりこさんがお菓子を紹介する本です。
おそらくこの上記3冊は著者が装丁もしているので、そのまとまった一個のプロダクトとしての完成度が高くて惹かれているのでは…と思いました。
「おやつにするよ」も平澤さんの時計イラストが半ツヤ晒しクラフト紙(表がツルツル・裏がざらざらの素朴な紙)に3色で刷られていて、ちょっと懐かしい いい味が出ています。
中身ももちろんイラスト満載・手書きの本文で、平澤さんの手帳のようで楽しいです。
かといってごちゃごちゃし過ぎていないのも好感が持てます。
けっこうこういう”小さなソフトカバー本”というのが、雑貨感覚で物として惹かれやすいのかもしれない…
今回好きな本の装丁を「どういう所が好きなのか」と見直せて、大変勉強になりました。
生意気に批評っぽいことも書いてるかもしれませんが、良い点を吸収させてもらって
これからもし冊子を作ることがあれば活かしたいと思います。
てかzineか何か作りたいな